働くことを学ぶ - 修業学習と職業陶冶

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6.1 労働の多様化と高度化とグローバル化

更新日: 2022/09/21

 情報技術の進展にともなって、国境の壁は実質的に低減しつつあります。しかしながら社会、なかでも教育についてはそれぞれの国の歴史的、文化的、社会的、地域的な文脈に深く埋め込まれた営みであることと、日本語が世界的に見て1ヵ国でのみ話される言語であることなどから、わが国の教育を世界的な視点から評価することが極めて困難です。国際化を果たすためには外国語によるコミュニケーションは不可欠です。国際的な学力調査や能力調査から、わが国の教育は優れていることが証明されていますが、国際的に広く使用されている言語から見た時の労働の国際性は極めて低いといえます。さらに教育から労働へと移行する環境の点からは情報技術の進歩が学習者の主体的な21世紀に入っても憂慮すべき点が多々あります。そこで非大学型高等教育の視点から検討したとき、労働と学習の融合に十分機能しておらず、教育の無償化への道筋を示していないことです。

 非大学型高等教育について議論されているのは、教育から労働への移行についての制度と内容、さらに最近の情報通信技術の進歩と普及において、従来の大学では対応できない課題に取り組んでいることです。訓練内容を修業生に一方に指示するような、教育者が主導して「教え育てる」の枠組みから、解釈学の視点から学習者の立場を理解し、学習者が中心になって「学んで気付く」という生涯学習の視点で組織される新しい枠組みに移行することが求められています。わが国では卒業式や免状授与式にみられるように、教育者が非教育者に授与する形式をとっていますが、それに対してEHLの表彰式では事務的に証書が授与されて被授与者が壇上に上がり、来賓や教育者は一般参加者と同じフロアに着席して祝賀する形式をとっています。また、指導の過程でも指導に当たっているパン職人の「われわれと学生は対等である」「学生を尊敬しなければならない」という主張がみられますし、実際に指導者が学生に対して注意したことに学生が対応すると「Thank you very much sir」と敬語で対応している場面があります。

 このように情報化社会における教育は学習者が主役です。教師はその学習を組織し支援する専門家です。そのような視点から筆者はヨーロッパ遠隔e学習ネットワークEDEN (European Distance and E-learning Network)の集会で自律学習(Autonomous learning)と名付けて、組織シンボリズム論や解釈学の知見を援用しながら学習方式の設計や評価の方法を報告して参加してきましたxx。資格を取得するのは学習者の努力の結果であって、その努力を称賛するのが免状授与式であると考えられています。

 スイスの高等教育の改革を理解するためには、20世紀後半のヨーロッパでの教育の動向を念頭におく必要があります。非大学型高等教育の考え方は、従来の大学を中心とした高等教育に代わって進められた学習中心の考え方を反映したものです。冒頭で紹介した国連の決議がなされたのは1966年ですが、その背後にはヨーロッパ諸国が抱えているこの目標は高等教育を推進するにあたっての理念「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」であって、いまだ完全には実現していませんが、目標に向かってさまざまな試みがなされてきました。


xx NISHINOSONO, Haruo (2003) MACETO Model for Äi0Instructional Development of Knowledge Creation in Äi0Large Class, Äi0Proceeding of 14th International Conference, Society for Information Technology & Teacher Education 2003, pp. 2057-2060
NISHINOSONO, H. and MOCHIZUKI, S. (2005) Metaphor, Image, Model and Proposition for Äi0Designing Autonomous Learning Äi0Proceedings of the EDEN, Annual Conference Helsinki University of Technology, Lifelong Learning Institute pp.41-47