働きながら学ぶ ― フランスの挑戦
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働きながら学ぶ フランスの挑戦

21世紀になって、無償の高等教育をどのように実現するかは国際的な課題です。1966年の国連決議で高等教育の無償化を目指す条項が含まれていましたが、わが国はこの条項に拘束されない権利を留保するとしていました。その留保条件を2012年に撤回し、わが国も無償の高等教育をどのように実現するかが課題になっています。ヨーロッパ諸国ではさまざまな試みがなされてきましたが、必ずしも成功への道を歩んでいるのではありません。

フランスでは上層階層と労働者階層とのあいだに深い溝があり、職業教育は《廃車場への道》とも呼ばれて社会的に低い評価を得ていましたが、これを《卓越性への道》に改革することを目指しています。これまでの社会階層を反映していた中等教育の複線型教育制度を1975年のアビ改革で単線型教育制度に改革し、すべての国民が中学校 (コレージュ) から高等学校 (リセ) へと進学し、中等教育修了資格であるバッカロレアも職業バッカロレア、普通バッカロレア、工科バッカロレアとして広く高等教育に進む道を拓きました。さらに2010年を過ぎてからはオランド大統領のもとで当時のマクロン経済・産業・デジタル大臣が職業教育の近代化に力を入れ、従来の職業教育のイメージを払拭することに努力しました。大統領に就任したのちも一層の改革を推進していて、現在矢継ぎ早にさまざまな提案がなされたり新しい法案が成立したりしています。

このような状況を紹介したいと考えて翻訳し始めたのが「マクロンによる修業学習 (L’apprentissage selon Macron)」です。フランス語からは長らく遠ざかっていましたし、訳語には辞書にないものを考えなければならなかったので、フランス会館関西-京都の講座に参加して、滞日6年で日本語の流暢なラファエル・ラフィト講師の助言をえて訳語を確定したものも多くあります。なお、修業学習としたのは16-25歳に限定した若者に安定した職業と将来展望を提供することを目的としており、年齢層がドイツの文豪ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」に対応することと、apprentissageが英語のlearningに対応しているので修業学習としました。直接の教師は職場の先輩であり、YouTubeであり、大規模公開オンライン講座MOOCです。これらが修業生研修センターCFAで統合されています。

教育統計では大学生 (étudient) と修業生 (apprenti) とは区別されています。修業生は雇用主と直接に修業学習契約を結びますから労働者待遇になっていますが、高等教育レベルの資格が授与されるので職業学士 (licence professionnelle) と同等ですし、昼間大学生も職業資格を取得しようとすると職場・教室交替制での職場体験が要求されるので、大学生と修業生とは全く同じ身分と資格です。大学は3年制 (教養課程に相当するものはリセでの最終級で履修) ですが、最近の教育統計ではBac+3やBac+5のように表記されてバッカロレア取得後の年数で表示されるようになっています。また、高等教育の資格としてはdiplômeが統一して用いられていますが、これは免状を授与する (diplômer) や免状取得者 (diplômé) として用いられているので、複雑な資格制度もしだいに統一される方向にあるといえるでしょう。

わが国も若い人々が中心となって無償の高等教育が実現することを祈っています。

(Apprentissage制度の紹介や国内での修業学習の開発に関心のある方のご連絡をお待ちしております)

翻訳責任者:西之園晴夫 (NPO学習開発研究所)
サイト開発責任者:仲奈々子 (MSギア社)

マクロンによる修業学習 フランスの制度 参考資料