働くことを学ぶ - 修業学習と職業陶冶

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7.1 おわりに

更新日: 2022/09/21

 情報通信技術の進歩によってキャンパスに束縛された学習だけではなく、インターネット上に実現している日常の学びが実現しています。そのような学びは国内だけでなく、世界的規模で学習することができるので、そのような実態を広い視野からとらえた教育の研究が必要でしょう。この度のCOVID-19禍を経験することによって、オンライン学習、遠隔学習、e学習などの重要性が認識され、それに対応できる指導者研修、学習案内、各種用具、学習指導資材の整備、学習環境の改善と施設設備の整備の必要性が指摘されています(UNESCO 2021)xxvii。現在世界的に研究が進められているディジタル学習も以上のような文脈から考えると、高等教育の普遍化に対して20世紀に発達した大学の学術を中心とした高等教育だけではなく、「働くことを学ぶ」ための非大学型高等教育の開発が望まれているといえるでしょう。

 絶えず変動し多様化している情報社会に高等教育が対応していくためには、先進的で優れた事例が参考になります。紹介したローザンヌ・ホテル業学校は非大学型高等教育機関として世界的に高いレベルの職業陶冶の学習を可能にすることを目指しています。わが国において多くの若者は成人年齢(18歳)に達した後、24歳頃までは安定した収入が得られない者も多いので、この期間での若者の経済的負担を軽減して職業能力を習得する自律学習システムの開発は欠かせません。それは職場に基盤を置く職業陶冶の道なのです。

 ディジタル技術が学習手段の中心になりつつある昨今、わが国も20世紀の職業教育パラダイムから21世紀の職業陶冶パラダイムに転換することが望まれます。本稿が非大学型高等教育(ISCED 5B)の在り方を議論するための資料になれば幸いです。


xxvii UNESCO COVID-19 : reopening and reimagining universities, survey on higher education through the UNESCO National Commissions,
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000378174, 2021(参照日2022.03.25)