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3.1 高等教育機構の改革期(2005-2020)

更新日: 2022/09/21

 従来、スイスやドイツなどの教育制度は普通教育と職業教育の二元制度(デュアル・システム)として紹介されることが多かったのですが、21世紀に入ってからの教育改革では、本文末の付図に示すように4本柱の教育課程となっています。それは高等教育機構大学部門HEU(Hautes Ecoles Universitaires)xiii、高等教育機構専門部門HES(Hautes Ecoles Spécialisées) 、高等教育機構教育部門HEP(Hautes Ecoles Pédagogiques)、職業陶冶部門(Formation Professionnelle)です。

 例えばフランス語圏の大学ではLicence やDiplômeなどの称号を用いていていました。ヨーロッパ各国の言葉で記述していた従来の証書・免状などの資格は、ボローニァ・プロセスxivの進展とともに、英語のBachelorとMasterを共通な用語として記述されることになりました。ヨーロッパ高等教育圏(EHEA, European Higher Education Area)内で流通する共通の資格として、高等教育の学習成果を保証するために欧州単位互換制度(ECTS, European Credit Transfer System)とともに圏内での資格の可読性(readability)と雇用可能性(empoyability)を保証することが実現したのです。

 図6には高等教育機構大学部門の変革期の資格取得者の人数の変化を示しています。これによると大学部門では従来の称号であるLicence/Diplômeの数は減少し、それに代わってBachelorとMasterが増加しています。

図6 大学部門の資格取得者の人数

 

 専門部門についても同じような現象がみられ、図7に示されているように、Diplômeの称号が減少しBachelorとMasterの人数が増えています。大学部門とは異なってDoctoratのコースはありません。

図7 専門部門の資格取得者の人数

 

 教育部門においては図8に示されているようにDiplômeの称号は減少していませんが、Bachelorは著しく増加しています。

図8 教育部門の資格取得者の人数

 

 図6の大学部門、図7の専門部門、図8の教育部門に見られるように、スイスの高等教育の改革は2001年から2015年にかけて体制が整ったとみてよいでしょう。なお、2020年で欧州高等教育圏に参加しているのは49か国とヨーロッパ委員会xvですが、この圏内で各国でのBachelorとMasterは職業資格としての可読性と雇用可能性が保証されたのです。


xiii HEU(Hautes Ecoles Universitaires) を大学高等教育校、HEP(Hautes Ecoles Pédagogiques)を教育学高等教育校と訳すこともできるが、いずれもBachelor、Masterの資格を取得するので高等教育機構での部門と位置付けた。

xiv NPO学習開発研究所の資料としてボローニャ・プロセスの加盟国と加盟年が掲載されており、オリジナルのURLも掲載されている。日本語の情報はつぎのURLで確認できる。
https://oj-learning.org/country/category/content/122

xv OECDヨーロッパ高等教育圏参加国とヨーロッパ委員会
http://www.ehea.info/page-full_members(参照日 2022.02.01)