働くことを学ぶ - 修業学習と職業陶冶

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はじめに

更新日: 2023/08/23

 21世紀に入ってすでに20余年が過ぎました。

 ヨーロッパでは、中等教育が上流階級と労働者階級に対応する複線型であったものが、1970―80年代に単線型あるいは総合中等教育として改革されました。しかし、わが国では第二次世界大戦後に中等教育は単線型でスタートしましたので、この時期に中等教育の改革は話題にはなりませんでした。

 その後、1990年代には高等教育の改革が議論されるようになりましたが、わが国では高等教育の普遍化は大学が中心で就職を強く意識したものとして進展してきました。ところがヨーロッパでは社会階層の分断が目立つようになり、国外からの難民や東欧からの労働移動などもあって社会が不安定になり、経済的、社会的、文化的な格差を克服することが課題になっていたので、高等教育の普遍化は授業料を無償あるいは低額に抑制することが教育政策と研究開発の基本理念でした。

 ヨーロッパの高等教育の改革は、右に振れ左に振れ、前進と後退を繰り返し、数多くの失敗を重ねながらある程度の落ち着きを取り戻しつつあります。その例としてスイスの陶冶(とうや、Formation)制度を紹介しています。また、ロシアのウクライナ侵攻に関する報道で、東欧の一般市民も英語で対応する場面を目にすることが多いですが、これは1987年に始まったエラスムス計画と、1999年のボローニァ宣言とその後のボローニァ・プロセスによる欧州高等教育圏(EHEA)が形成され、ヨーロッパ全域で教員と学生の活発に交流し、その成果が現れたものと考えられます。このボローニァ・プロセスには現在45か国が参加していて、ウクライナも2005年に参加しています。

 わが国の人口は2004年12月に12,784万人のピークを迎え、その後、減少に転じて、2022年9月には前年同月比で73万人の減少となり、このまま推移すると2048年には1億人を割るという予測もあります(内閣府)。このような現象を食い止めるために外国人労働者を招く計画もありますが、日本の給与は先進国の間では必ずしも高いとは言えませんから、優秀な人財はオーストラリアなど他の国に吸収されてそれも望めないかも知れません。また、日本人の英語力は2022年で世界の非英語国111か国で80位ですから、英語で生活するのも不便で外国人にとって暮らしやすい国とは言えないでしょう。ではどうするか。それがわが国の教育界が当面している課題です。

 

  • 高等教育の教育費を低減する方法はあるか?
  • 誰もが参加しやすい万国共通の若者の文化はなにか?
  • それは音楽とスポーツであり、特に庶民楽器のウクレレ文化が有望である!

 

 これが私の結論ですが、そこには論理の飛躍があります。しかし、わが国の教育界が当面している課題は、飛躍することによってしか解決はないのかも知れません。その理由については次第に説明していきますが、日本特有の職人文化は世界に誇れるものですから、それを紹介するためにウクレレ・プロジェクト活動に参加して国際化を進めることが、問題解決の糸口になるかも知れません。なお、私が国際社会に向かって発信してきた教育工学や教育技術の英語の論文は文献検索システムResearchGateでHaruo Nishinosonoの著者名で検索していただければ参照することができます。これからは若い研究者や現業者や修業生が中心となって、わが国の職業専門陶冶(VPET)の開発を進め、国際社会に貢献されることを期待します。

 この資料は私個人の回想録としてZ世代の読者のためにまとめました。